認知症の進行に備える成年後見制度 ― 後見人ができること・できないこと
日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えており、高齢になるほど認知症の発症リスクは高まります。
厚生労働省の調査では、2022年時点の認知症の高齢者は約443万人と推計され、65歳以上の高齢者の有病率は約12%、おおよそ8〜9人に1人にのぼります。さらに国の最新の将来推計では、認知症の高齢者数は2030年に約523万人、2050年には約587万人に達すると見込まれています。認知症は、もはや誰もが直面し得る身近な問題です。
認知症の症状が進むと、物事の損得を判断する能力(意思能力)が低下し、ご自身の銀行口座からお金を引き出す、定期預金を解約する、医療・介護施設と適切な契約を結ぶ、といったことが難しくなります。また、高齢者を狙った訪問販売や、巧妙な振り込め詐欺などのトラブルに巻き込まれるリスクも高まります。
こうした状況から、ご家族が認知症を発症したことをきっかけに「成年後見制度」の申立てを検討される方が大半を占めています。
1. 成年後見人が本人に代わってできること
成年後見人は、本人の体調や生活状況をチェックしながら、法的な権限を持って主に次の業務を行い、本人の権利と財産を守ります。
(1) 日常的な財産管理と生活支援
- 預貯金や手元現金の適切な管理(通帳の保管、口座の入出金管理など)
- 定期的な支出の支払い(入院費、施設費用、税金、公共料金等の決済)
- 定期的な収入の受取(年金や福祉手当などの受領手続き)
- 家庭裁判所への定期的な状況報告
(2) 特別な手続きや重要な法律行為
- 病院への入院契約や、介護・福祉施設への入所手続き
- 本人に代わっての遺産分割協議への参加
- 不動産の売却(施設入所費用の捻出などのため。ただし本人が居住している自宅を売却する場合は、家庭裁判所の事前の許可が必要です)
- 確定申告などの税務申告や、必要な訴訟手続き
(3) ご本人が亡くなった後の最後の仕事
- 相続人や家庭裁判所への財産目録・最終報告の提出(原則2か月以内)
- 確定した遺産を正当な相続人へ引き渡す業務
- 成年後見等終了の登記申請手続き
2. 成年後見人が「できないこと」
後見人は万能ではありません。トラブルを防ぐためにも、次の行為は法律上行うことができない(権限がない)点に注意が必要です。
- 直接的な介護行為:後見人自らが家事や入浴介助、病院への送迎といった事実上の介護をすること。これらは介護福祉サービスを契約することで手配します。
- 身元保証人・連帯保証人の引き受け:施設入所や入院の際に、後見人個人の立場で保証人になることは原則できません。
- 医療行為への同意:手術や延命治療の判断など、本人の生命・身体に関わる医療同意権は、現在の法律上、後見人には認められていません。
なお、親族が後見人に選ばれた場合、上記のような行為を「後見人として」ではなく、これまでどおりの「家族・親族の立場」として行うことは当然に可能です。
3. プライバシーは守られます(成年後見登記制度)
「後見制度を利用すると戸籍に記載されたり、他人に知られたりするのでは」と心配される方がいますが、それは誤解です。
成年後見制度の利用事実は戸籍には記載されず、東京法務局の「成年後見登記簿」に登録されます。この情報を確認できる「登記事項証明書」は、本人・後見人・正当な利害関係人など限られた人しか請求できない仕組みのため、第三者にプライバシーが漏れる心配はありません。
4. 春日井市での成年後見・認知症対策のご相談は当事務所へ
成年後見制度は、認知症という大きな不安に直面したご家族を、社会全体でバックアップするための重要な制度です。
当事務所では、家庭裁判所への後見申立手続きのサポートから、お元気なうちに将来の後見人を自ら指名しておく「任意後見契約」の設計まで、お一人おひとりのご希望に沿った最適な認知症対策をご提案しています。まずはお気軽に当事務所までご相談ください。
